Q1. 現在の事業内容について教えてください。
弊社は、食とペットの分野で事業を展開している会社です。
食で言いますと、お米や卵など食料品全般の卸売業をしています。お客様はB2Bで、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニといった量販店と、居酒屋や飲食店、ホテルといった業務用のお客様に食品を卸しています。
特にお米と卵が主要アイテムで、どちらも工場を持っています。精米工場と、卵の選別・パッキングをする工場です。メーカーの機能も有している卸売業、という形ですね。
食の分野では、実はB2Cもやっています。道の駅のような、地場産品を取り扱う産直市と食堂が複合型になっているお店です。食をダイレクトに消費者の方にお届けするリテールの事業として展開しています。
ペットについても、もともとはB2Bからきていて、スーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンターなどに卸をしていました。その事業をダイレクトに消費者の方々にお届けできるようにするために、B2Cのペットショップを展開しています。
Q2. 御社の強みはどこにありますか。
1つ目は、精米工場を持っていることです。高知県下では、お米の出荷量で当社がトップシェアなんですね。高知で食べていただいているお米の約40%近くは、我々が提供しているお米で成り立っている構造があります。
その中で、我々は無洗米という、研がずに炊くことのできる加工を施したお米を供給しています。全国平均では、お米の販売量に占める無洗米の割合は10%くらいと言われるんですが、高知県下では30%近くまで無洗米の消費量をつくれている。我々の商品の特性が市場に伝わっているから成り立っている構成比だと思っています。無洗米は川を汚しにくいという文脈もあって、そこが高知県にも認められて、県と清流保全協定を結んでいます。
2つ目は卵です。四国全体から仕入れをしていて、大型の養鶏場が4つ以上あり、そこから供給していただいているので、流通における安定供給が叶えられます。こちらも県内で40%以上のシェアを持っています。
3つ目は、お米の専門の仕入れ部隊があることです。従来、お米はJAさんや商社系から調達する流れが一般的でしたが、我々は600名ほどの生産者の方々と直接やり取りをしています。作付けの相談から保管、輸送まで直接やる部隊が社内にある。それによって、商品の特性や製品づくりにダイレクトに生かすことができるんです。
商品の差別化になりますし、直接調達することで仕入原価も下げられるので、収益性にも貢献しています。生産者の方にフィードバックをお返しできますし、逆に要望も直接うかがえるので、次の問題発見と解決を一緒に取り組める。好循環で回すことができるイメージですね。
4つ目が、産直市と物販と食堂が複合型になったお店です。道の駅は公共のものですが、我々は民間で独自に直営でやっています。生産者の方、農家さん、地元のお菓子屋さんなど、地元の方々の個性を消費者の方に楽しんでいただきたい、というのがコンセプトのお店で、作り手を近くに感じられるお店を高知で2店舗やっています。
お客様が毎日来られたり、作り手の方も毎日出荷してお客様の顔が見えたり。我々もお客様の声や作り手の状況を把握できる場所になるので、地域にとっての三方よしのプラットフォームをつくっている、という強みですね。
5つ目がペットです。ペット業界には、育てるのを放棄してしまったり、ご家族に迎え入れたけれど相性が良くないから手放してしまったり、という問題が往々にしてあります。産めば産むほど利益になりやすい産業でもあります。
我々は、人とペットが豊かに共生できる世界をつくりたいと思っているので、正しくブリーディングをされているところからワンちゃんをお預かりします。そして飼い主さんとマッチングするときに、そのワンちゃん自身の個性を見て、社会化につながる訓練を施しているんです。人は怖くないよ、と伝えたり、触れ合うことで慣れていったり、食事も問題なく食べられるようにしたり。この社会化トレーニングを、お届けするワンちゃん全頭にしっかり施しています。
その派生で、いまはワンちゃんの幼稚園もやっています。しつけという面もありますが、どちらかというと共生社会を目指しているので、ワンちゃん自身が社会に慣れるということ。それと、ご自宅で飼われている方がお仕事に行かれるとき、置いていかないといけなくなる。そこをサポートするという意味も含めて、事業としてやっています。
Q3. 4代目として会社を引き継ぐ中で、数字を改善すること以上に難しかったことは何でしょうか。
組織風土ですね。
私自身が後継者という立場ですし、4代目なので、それぞれの代表者がつくり上げてきた風土があります。先代がつくり上げてきた風土を変えるというのは、いまも継続してやっている大テーマです。
一番最初に実行したのは、全社員と面談したことです。240名ほどいたんですが、一人ひとりと時間を取りました。座って30分ほど話すこともありましたし、お店で立ち話で10分15分ということも含めて、面談と定義しています。
その240名の方々と話をしながら、組織の風土と、各自の能力のありどころ、コンディションを最初に把握していきました。実際に何が好きで何が嫌いなのか、仕事の意味をどう考えているのか、何が得意で不得意なのか。それを個人レベルで把握していった感じです。
Q4. 長く続いてきた会社で、何を残し、何を変えていきたいと考えていますか。
一番変えてはいけないのは、理念だと思っています。
「人が豊かに生きるため、生活文化を『創造』『提案』し、地域社会に貢献する。」というのを理念として掲げています。特に私自身は、地域社会に貢献するという思いですね。この地域で集まってきているからこそ、つながりをいただいているエリアだからこそ、その地域に貢献したい。これは私も引き継いできたものですし、次の後継者にも引き継いでいってほしい思いです。
逆に、変えないといけないのは価値観のほうかなと思っています。価値観は10年、十数年のスパンで世の中が変わるので、提供しないといけない価値や存在意義も変わっていくと思うんですよね。いまはミッション・ビジョン・バリューを掲げて、社会における我々の存在意義はこういうところにあると思う、ということをビジョンとして掲げてやっている最中ですが、これ自体もあと数年するとまた少し違う価値観が必要になってくるのかなと思っています。
変えてはいけないのは理念で、変えていかなければならないのは価値観。そういうことかなと思っています。
Q5. 就任したばかりのご自身が、いまの経営を見たら一番驚くことは何だと思いますか。
利益よりも資産を重視しているところが、一番驚くんじゃないでしょうか。
当時は、資産を良くする、守るという観点は全く持てていなかったと思うんです。営業赤字でしたから、どうやって稼ぐんだ、どうやって売上を増やすんだ、ということしか考えていなかった。だからやれたことも多かったんですけれど。
いまは、いい時もあれば悪い時もあります。どちらにしても、積み上げていけるかどうかのほうが大事だなと思っています。人との関係、お金も資産のひとつなのでお金も、それだけじゃなく成長とか、できることが増えたということも資産として積み上げられていくものなので。今年よりも来年、来年よりも再来年という形でちゃんと積み上げていけることのほうが、短期的に稼ぐことよりも重視すべきだなと。当時の私にこう話しても、たぶん分からないと思います。
代表者になって8年、経営者になって13年になります。振り返ったときに、この10年はどうだったのかなと考えるんですよね。何が残って、成長したのかな、という観点で。
会社も続いていますし、収益性も上がってきていますし、メンバーと共有できることも多くなってきている。ただ、ここから先の10年を考えたときに、成長していく10年にするためには、稼ぐだけじゃダメなんだな、ということを思ったんです。稼ぐことで成長するわけじゃなさそうだな、と。
じゃあ何が成長に寄与したのかというと、理念や価値観、人が成長しているか、自分ごととして人生が進んでいるか。前に進もうとする力を一人ひとりが持てているかどうかのほうが大事だなと。私たちは「生きる糧をつくる」というテーマでやっていて、目の前のことにやりがいを感じたり、それ自身がご本人の生きがいになっていたり、そういうことが循環している世の中をつくるのが我々のビジョンなんです。そういう状態をつくっていくことのほうが大事で、稼げばその状態になるわけじゃない。
少しインパクトのある話をすると、フェーズによっては、過去3年分くらいの収益を全部飛ばしてしまうような赤字を掘る年もあるわけなんです。それでも会社は成り立つ。それができるのは稼いできたからということも大事なんですが、次の収益をつくるためには、早く行くことよりも、遠くへ行くという考え方のほうが大事だなと、そのときに感じていて。
大きな赤字を掘ったとしても、それは本当にいまの話なんです。向こう10年に向けて、遠くまで歩かないといけない。1年2年何とかしても、まだ10年も20年も先に、それぞれみんな人生がある。そっちを見ながら歩んでいけたほうが、結果的に「遠くまで来たな」ということになると思う。そういう体感を、事業をしながら得ています。
Q6. これまでで一番辛かった時期と、そこから見えたものを教えてください。
外的要因なんですが、コロナですね。2020年です。
2018年に代表者になって、1年半ほどでコロナが来ました。それまでは会社の赤字を黒字化させないといけないということで、事業をつくることと組織を整えることに一心不乱に取り組んでいて、2018年頃はその結果がしっかり出始めたタイミングだったんです。黒字化もできて、収益も安定してきていた。
ここからより事業をドライブさせていけるフェーズでもあったので、お店を増やそうか、四国全体に、中四国に営業を拡大していきたい、新しい投資を増やしていこう、と動き出していたところにコロナが来て、全てがストップしてしまいました。
経済的にしんどいということもありますし、メンバーも目の前の売上が消えていく事業があるので、不安を感じていないだろうかと。短期的には、売上が消えるということは借りているお金も返さないといけないので、資金繰りの不安もありました。
個人的なことを言うと、2020年の初頭は3人目の子どもが生まれて2、3か月という時期だったんです。だから感染症そのものへの不安もあって。事業もプライベートも未来が消えている、混沌としているというところに、すごく不安を抱いていました。円形脱毛症にも結構なりましたね。頭だけ回るけれど体を動かせない、という状態でした。
それまでは、とにかく収益性を上げないといけない、黒字化させないといけない、ということをメインに考えていました。でもその活動自体ができなくなって、改めて、未来がどうなっていくか不安だというのは私だけじゃなくてメンバーも同じだろうな、と思ったんです。
臭い話ですけれど、希望を描かないといけない。それがないと私自身も不安だし。希望を描く必要があるよな、ということを思い始めたのが2020年、コロナの渦中でした。
そこで、組織がどっちに向かっていかないといけないのかを定め直そうということで始めたのが、いわゆる存在意義、パーパスの整理です。ミッション・ビジョン・バリューを整理して、自分たちはどういう存在なのかを改めて確認する期間にしよう、と。社内で「未来創造プロジェクト」というものを立ち上げて、抜擢した14名ほどで取り組みました。
結果的にそれが、いまの組織開発、組織風土にかなり大きな機能を果たしてくれるものになっています。パーパスやミッション・ビジョン・バリューを定めることで組織運営をしやすくできたのは、コロナがあったからこそ、というところはありますね。
Q7. お米の価値について、消費者にまだ十分伝わっていないものは何だと思いますか。
シンプルに、お米の個性だと思っています。
いまは産地銘柄、いわゆる産地神話のようなものがありますよね。日本で一番おいしいお米はどこそこのもので、それ以外はそんなに変わらない、というような。それを否定するつもりはないんですが、それと比較して、他の産地で穫れるお米であっても、日本で一番うまいと言われるお米に匹敵するくらい、数値的にも定量的なデータとしても匹敵するおいしさを放つお米が、日本各地にあるんですよ。それが知られていない。
お米のおいしさは、産地の環境要因や気候、品種、作る人の作り方、製法で決まっているんです。だから「あの産地だからおいしい」という盲目的な話では実はなくて、誰がどこで何をどう作っているかで全然違う。そこがうまく伝わっていないなと思っています。
我々は卸売業をしているディーラーで、かつ精米工場という機能を持っています。だからこそ、もともと持っている個性をポテンシャルとして最大化した状態でお客様にお届けするという責任があると思っているんです。そのために、全商品を定量的にデータ化しています。誰がどういう品種でどういうものを作って、こういうところがあって初めてこのおいしさになっている、ということを見える状態にしている。
それがうまく伝わっていないと、何を損ねているかというと、生産者の次のやりがいを損ねてしまっていると思うんです。「Aさんが作ったお米で、お客さんに喜んでもらいましたよ」という声が返っていけば、次のやりがいの再生産になる。そういう循環構造を我々はつくっていくんだ、というのを「お米の再定義」と言っています。
構造上、どうしても複数の生産者のお米が一つの商品にまとめられて出荷されます。安定供給のためにやらないといけないことではあるんですが、作り手からすると本意ではないだろうな、という理解があって。本来は、誰が作ったもので、それがどうだったのかをご本人に返すためには、商品の中身が分からないと返せないじゃないですか。そこまでできて一つの循環だろうなと思うので、それができるように、いまブランドを開発しているところです。2026年秋ごろをめどに進めています。
Q8. 経営者として、この問題だけは何とかしたいと思っている社会課題はありますか。
無気力とか、やっても無駄とか、どうせ自分なんて。そういう思いを減らしたいというのが立脚点にあるんですよね。
やってみたらできるかもしれないし、やってみないと分かることも分からない。その背中を少し押してあげるということを、組織のパーソナリティとして発揮したい。塞ぎ込んでいる人たちに、こうすればうまくいくんじゃない、と感じてもらえる価値を届けられると、「じゃあちょっと私もやってみようかな」という気持ちになってもらえる。それをしたいんです。
逆に言うと、イケイケドンドンでうまくいっている人には、正直あまり興味がなくて。それはもう頑張ってください、という感じなんです。それよりも、頑張りたいけれどうまくいかないとか、ちょっと勇気が出ないとか、一歩踏み出せないとか、私なんてと諦めてしまっているとか。そういうことは基本的にないと思っていて、みんなやればできる。
楽をすることがダメだという話ではないんですけれど、諦めるのは嫌なんです。やればできるのに諦めていることに、ちょっと腹立たしさを感じる。そんなことないじゃん、こういうことをやってみたら、こういう観点で考えてみたら、と言うと、「考えてなかったです」「やってみたことない」と。じゃあもったいないじゃん、と。試してみたことでご本人が生きやすくなったり、ちょっと前向きになったりすれば、いまに立ち止まらなくて済む。そういうことを事業を通じてやっている、ということですかね。
Q9. ご自身で発信を続けている理由と、その先に描いているものを教えてください。
これはもう、『現代の名刺』だと思っています。自己紹介するツールが、紙の名刺からSNSになっているだけ、という感覚です。私にとっては、どちらかというと義務に近いですね。それがないと、コミュニケーションの入り口にもなっていない、という感じがあるので。
私がやるから、会社のSNSやPRの案件、メディアへの露出が進んでいるんだろうと思います。仮に私が、分からないから怖いからやらない、と全部控えていたら、社内でやっている事業の紹介も、新しい方とのつながりも、発生するエネルギーはないと思うので。
トップが発信することで、「発信していいんだ」という免罪符にもなると思います。それに、自分たちがやっていることをPRしないといけないし、PRするのであればお客さんにとっていいものでないといけない。自分たちの商品のクオリティをちゃんと上げていくという、反対側の作用も起きると思っているんです。結局、実力を上げないと、発信している内容の中身は良くなっていかない。
主語が少し大きくなってしまうんですが、私は日本が好きで。地域社会に貢献するという思いでやっていますが、その「地域社会」という言葉には日本も入っていたりするんですね。
私が活動していることで、少しでも日本が良くなる。次の世代に少しでもいい状態で渡せる。次の世代にとって引き継ぎやすい、良い状態になるようにしたいなと思いながら、いろんな事業をやっています。
SNSの発信も、そういう思いを持っているやつが高知というエリアでプレイをしている、ということを見てもらう。東京や大阪といった大規模な場所の人じゃなかったとしても、環境要因だけじゃなくて、やり方や思いで、自分にももしかしたらやれることがあるかもしれない、と感じてもらえる人が一人でも増えることがあれば、私はもう嬉しいなと思います。やりがいの循環に、一歩近づくので。
私も頑張るから頑張ろうよ、という感じですよね。でも、やってみないと分からないし、行動しないと。そういうことをやっているつもりです。
Q10. 5年、10年後に「山﨑大輔は◯◯を世の中に残した人だ」と言われるとしたら、何が入っていてほしいですか。
誇り、かなと思っています。
特に私たちは米屋なので、日本の主食であるお米は、私は好きですし、なくなってほしくないと思っている食べ物なんです。それで育ってきていますし。簡単に言うと、農家さんの誇りでなんとか成り立っているようなところがある。もう少し広い範囲でいくと、地域それぞれに、日本人として守っていきたい誇りのようなものがあると思っていて。
その誇りがなくなってしまうと、日本ではなくなってしまうんだろうと思うんです。だから、そこを守る、高めるということにつながる活動、人生でないとダメだな、ということは思っています。次の世代がやっぱり日本人なので、そういう日本であってほしいなと思っています。
おこがましいことを言っているんですけれど、誇りかな、と思っています。
著書について
初のビジネス書を執筆中です(2027年春に出版予定)。
これまでの組織開発のノウハウを体系化した一冊になります。