INTERVIEW

安心・安全・きれい・丁寧。そこだけは、どこにも負けない。

庄司 譲 有限会社湘南住建 代表取締役
庄司譲さん

不動産の仕事を50年近く続けてきた庄司譲さんが、解体の会社を立ち上げたのは10年ほど前。きっかけは、解体の現場で修業していた息子さんだった。いまは自ら重機に乗り、日本の家を建てたときと逆の順に「逆パズル」のように外していく。土地を買う、壊す、建てる、貸すまでを一社でつなげようとする、親子二人三脚の解体会社の話を聞いた。

Q1. 現在の事業内容と、御社の強みを教えてください。

事業は解体です。解体、リフォーム、建築、土木、リサイクルという形でやっていますが、基本は家屋の解体ですね。木造から鉄骨造、RC造まで。主に戸建てやアパートの解体です。

強みは、地域密着で、下請けを一切使わずに自社施工でやっていることです。全部うちの社員でやっているので、途中の中間マージンや余分な費用がかからない。その分、お安くできます。

それと、私はもう1社、不動産会社もやっているんです。不動産をもう50年近くやっているので、壊したあとの土地活用まで考えた整地をする。その仕上がりを、ほかよりすごくきれいにするところは売りですね。

Q2. 不動産の会社が、解体の事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけは息子です。高校を卒業して、不動産をやるより、デスクワークより、体を動かす建築のほうをやりたいと。それで、知り合いのやっている解体会社で働き、修業して戻ってきたら独立する、という感覚だったんですが、まだ若いし、一人で独立しても大変だから、「じゃあ俺が解体の会社を作るから、一緒にやろうよ」と。それが始まりですね。

やっていくうちに、不動産と解体はすごく関係があると分かってきました。家を売るときも、建て直すときも、建売りでも、必ず壊す。だったらよそに頼むより、自分のところでできれば、土地の買い取りから、壊して、作るところまで、全部ワンストップでできる。面白いじゃない、という感覚がありました。

実際に、相続した土地を地主さんから私のほうで買い受けて、全部壊して、区割りして販売したこともあります。一石二鳥、三鳥ぐらいの効果があった案件が何件かありましたね。

解体のあとに「どうするんですか」と聞くと、売却したい、駐車場にしたい、というお客さんも多いんです。駐車場にするなら、うちで作って管理して、借りる人も付ける。売るなら、うちの不動産のほうで仲介に出して、売るお手伝いをする。不動産屋で物件やお客さんを募集するより、解体には「売る人」が来るんですよ。売るから壊すので。普通の解体屋とは違うやり方をやっていきたい、というのがいまのうちのやり方です。

ちょっとしたこだわりですが、電話番号はゾロ目にしているんです。不動産の会社は1111、湘南住建は5555。お客さんが覚えやすくて、かけやすいようにしています。

Q3. 実際に解体を始めてみて、不動産業とは全然違ったと感じたことはありますか。

体を動かすことですね。私自ら現場に行って、重機に乗って壊していますから。解体が楽しくて、不動産のほうがおろそかになってしまって、2年前から不動産の会社は妻に社長を任せて、私はほとんど解体の工事のほうをやっています。体を動かすほうが健康的にもいいんですよ。

これまでずっとデスクワークで、頭を抱えながらやってきたのが、いまは重機に乗って「この家をどうやって壊してやろう」と、ゲーム感覚でやっています。

思いっきり壊す、というのとは違うんです。不動産で建売りもやってきて、作るほうを見てきたので、作るのの逆で壊す。ガチャン、ドーンとほこりを舞わせて壊すんじゃなくて、柱を1本1本つかんで、上に上げて、外していく。日本の木造の家は、釘を打っているところ以外は、はめ込み式で作ってあるんです。だから、はめ込んであるところを外したり、上に上げたり、ずらしたりすれば、柱は簡単に取れるし、簡単に倒せる。それを見つけながらやっていくのが楽しいんです。

作ったものを、きれいに外していく。逆パズルですね。近所の方が見に来て、「こんなにきれいに、こんなにうまく壊せるんだ」と言われるのが、気持ちいいんですよ。

Q4. 専務である息子さんとは、どのように役割を分けているのですか。

役割分担は、はっきりとはないですね。お金や経理の関係は私と息子の両方でやって、工事はお互い別々に自由に重機に乗って、見積もりもお互い時間があるほうが行く。本当に同じことを二人でやっています。二人社長の感覚で、後を継いでもらいたいので。ほかの業者さんからも「いいね、うらやましいね」と言われるぐらいです。

もちろん、ぶつかることもありますよ。息子は器用にスピーディーに壊す派で、私は慎重な逆パズル派なので。「もうちょっとこうすれば、ああすれば」「分かってるよ、うるさいな」と。でも、その場でぶつかっても、お互い一人でやっているときに「こんなこと言ってたな。ちょっとやってみよう」となるんですよ、人間って。

親子のいいところは、信頼して何でも相談できることです。いくらでやるか、という金額のことでも何でも、腹を割って話せる。この仕事は、覚えたらすぐ独り立ちしてしまう人も多いので、教えながら、お互い助けながらやれるのは、親子ならではだと思います。

難しいのは、お互いに甘えが出てしまうところですね。他人同士ならそこまではぶつからないだろう、という衝突も多々あります。でも、次の日にはケロッとしている。そこもまた、親子のよさですね。

息子は31歳で、世代が違うので考え方も違います。私は昭和の人間ですから、従業員への言い方でも「その言い方はダメだよ」と息子に言われたりする。今どきのことをよく知っているので、ホームページのアイデアでも、私一人だったらできなかったことができています。

ホームページはいま、AIにも見つけてもらいやすい言葉に少しずつ書き換えているところです。今年は、ネットで電話やお問い合わせメールをいただいた、直接のご依頼の仕事しかやっていないんです。それだけでやっていけています。よその不動産屋さんからの依頼や、下請けはほとんどありません。これ以上多くなったら一人足りない、というぐらいお問い合わせをいただいています。

Q5. 解体工事では近隣への対応も大切だと思います。いちばん気を使うのはどんなところですか。

いちばんは振動ですね。音は、飛行機が3分くらい通っても「うるさいな」くらいで済むけれど、振動は地震と同じで、たった1分でも怖いじゃないですか。人間は、振動がいちばんストレスがたまる。それ以外は五十歩百歩ですね。

あとは挨拶です。スタッフには、国籍に関係なく、挨拶だけは必ず日本語でするように言っています。現場の前を通った人が立ち止まって見ていたら、まったく知らない人でも「こんにちは」「どうも」と必ず言う。2メートルの範囲を通ったら、目が合っていなくても「こんにちは」。そうすれば、向こうも「こんにちは」と気分よく返してくれる。

普段からそうしていれば、車がじゃまになったときに「すみません」と言っても、「いいよいいよ」という感覚になってくれる。何も言わずに黙々とやっていたら、ちょっとしたことでクレームになる。人間ってそんなものですよ。

これから土地や中古の家を買って、壊して、初めてそこに住もうという人がいるとしますよね。壊しているときに近所の人に嫌なイメージを持たれたら、せっかく新築を建てても、嫌なイメージのまま引っ越してくることになってしまう。そこまで考えてやるのは、不動産をやってきたからだと思います。ただ壊すだけの解体屋だったら、壊したらおしまいですから。

息子もずっと野球をやっていたので、社員への指導がうまい。若手を育てるうえでは、そこもいいところですね。

Q6. これまでで、特に難しかったと記憶に残っている現場はありますか。

狭い土地に建っていた、RC造の3階建てですね。重機を屋上に載せて、屋上から壊して降りていくしかなかったんです。壊したガラを山にして、そこに降りて、そのガラをどけて、床を半分壊してガラを下の階に下ろして、空いたところからまた降りて、残りの半分を壊して。3階建てですが、土地自体が狭くて、重機がうまく回れない。本当につらかったですね。結局、やってみたら赤字でした。

あとは、いまでもそうですが、火災の現場です。燃えカスは灰なので、重機を使うとすぐ飛んでしまう。だから最初に燃えカスを全部手で集めて、捨ててから壊すんです。警察と消防の調べが全部終わって、許可が出て初めて壊せる。においも残りますし、正直、きつい現場です。

Q7. 見積もりには、どんなこだわりがありますか。

見積もりも立ち会いも、いまはお互い協力してやっております。1件で1時間くらいかかりますね。全部計算するので。平米でいくら、立米でいくら、何トンでいくら、と全部出します。

不動産をやっているので、登記簿の謄本を確認して、間違いのない平米数で計算できるんです。お客さんは「40坪だったかな、30坪くらいかな」と、だいたいしか知らないことが多い。手で測って概算で計算する業者さんもいますが、うちは完璧にやりたいので。

屋根も、瓦、スレート、銅板、アルミといろいろあって、それで金額が全然違う。外壁も、モルタル、木、サイディングがあって、サイディングでも3種類くらいある。中も、ボードがどれくらいあるか、床はフローリングかクッションフロアか絨毯か、畳の部屋は何室あるか。細かいところまで全部出していきます。土地の形や間口でも変わります。間口が狭いと大きい重機が入らないし、入っても回れない。それで日数も値段も全然変わってしまう。

何人で、何日で、重機を入れて何日で壊して、という計算と、平米の計算と、両方から出して合った数字にする。だから、あとから追加を出さない見積もり、というのがうちの売りですね。もちろん、見積もりの段階で本当に分からなかったところは、お客さんにもご理解いただくしかないですけれど。

現場の写真は、作業に入る前と、仕事をした毎日、スタッフが撮って、LINEで会社に送ってくれています。今日はここまでやりました、と全部報告してもらっているので、写真を見れば現場の進み具合はだいたい分かります。

Q8. これから5年で、湘南住建をどんな会社にしていきたいですか。

私としては、いまの倍ぐらいの規模で、それを維持できれば、という感覚です。息子は、もうちょっと大きくしたい気持ちがあるみたいですね。息子に託す前に、従業員ももうちょっと増やして、件数もできて、売上も上がっていればいいかな、と。

解体を10年近くやってきて、いま建設業の許可を申請しているところです。いまの解体工事業の登録だと、請け負えるのは500万円未満の工事なので、木造しかできなかった。建設業の許可が取れれば、マンションのような規模の大きい解体も受けられるようになります。

それと、不動産ともっとタッグを組みたい。リフォームでも、内装の解体は必ずありますから。いま、一般の方がマンションや古いアパートを一棟買って、家賃収入を得る「大家さん」の投資が、じわじわ来ているんです。若い女性にも「職業・大家さん」が少しメジャーになってきている。古いアパートを内装解体して、リフォームして、1部屋ずつオーナーを付けていく、というやり方も面白いと思っています。

オーナー探しから、入居者が入るところまで、うちは不動産もやっていますから、全部できればいちばんいい。本当のワンストップを、5年以内に、私としては3年ぐらいの間に作りたいと思っています。

1、2年で解体のほうはある程度息子に任せて、私は不動産との連携のほうをやっていきたい。そうすれば、解体の金額をそんなに上げなくても、従業員の給料をもう少しプラスしてあげられると考えているんです。

Q9. 最後に、仕事に対する思いを聞かせてください。

人間の生活に必要なものは衣食住で、その「住」に付いてくるのが解体だと思うんです。

解体は、できる限りリーズナブルな金額でやっていこうと思っています。ただ、いろいろなものの値段が上がっているなかで、抑えられないところもたくさんある。それをどこでカバーしてやっていくかが、これから先もずっと私の課題だと思っています。

作るほうには、しょうがないなとお金をかけても、壊すものは本当になくなってしまうものだから、お金をかけたくない。解体は、そういう工事の仕事なんです。そこはどうしても拭いきれない。

だからこそ、安心・安全、そしてきれい・丁寧。そこをいちばんにして、そこだけは絶対にどこにも負けたくない。そういう会社にしたいというのが、いちばんの気持ちです。

従業員はみんな一生懸命頑張ってくれているので、どんどん給料を上げたいんです。でも、解体の費用はなかなか上がらない。前は、不動産屋さんや建築屋さんを回ったり、ネットの一括見積もりのサイトに登録したりもしていました。それがだんだん、自分のところのホームページにお問い合わせが来るようになって、全部やめて、それでやっていけるようになった。ここまで来たので、絶対に戻らないように、頑張り続けるしかないなと思っています。

PROFILE

掲載者・会社情報

会社名
有限会社湘南住建
氏名
庄司 譲
役職
代表取締役
所在地
神奈川県大和市
事業内容
解体業全般

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