INTERVIEW

「良いアイデアが、ちゃんと世に出る」を当たり前に。

高井 昭彦 Yakaze Tech Studio株式会社 代表取締役・CTO
高井昭彦さん

「言われたものをそのまま作る“大工”ではなく、理想を提案する“設計者”でありたい」。そう語るのは、Yakaze Tech Studio株式会社の代表取締役・CTO、高井昭彦さん。9年のエンジニア経験を経て起業し、スタートアップの“0→1”を伴走するシステム開発を手がける。受注からわずか2週間でプロトタイプを形にする独自のスタイルと、「創造の可能性を無限に広める」というビジョンに込めた思いをうかがった。

Q1. 現在の事業内容について教えてください。

基本的には、システムの受託開発をしている会社です。Webアプリを中心に、iOS・Androidアプリを開発しています。

主な顧客はベンチャーやスタートアップで、「新しいシステムでサービスを作りたい」という、その最初の一歩を私たちがお作りすることが多いですね。

うちは、事業の立ち上げフェーズ、いわゆる“0→1”に特化していて、既存になかった新しいものを作るときに強い会社です。

業種は問いませんが、経験があるのは医療・教育・建設/不動産あたり。

たとえば、神戸大学発のバイオテックベンチャーであるTearExoさんのアプリ開発をご一緒しました。涙から乳がんリスクを可視化するという、最先端の取り組みです。

今までになかったようなアプリでも、そういうプロジェクトに一番向いた作り方をしています。

Q2. 業界内での強みはどこにありますか。

まず、作り方が特殊なんです。受注してすぐ、2週間ほどでプロトタイプを作ります。

要件定義をしないわけではないのですが、とにかくプロトタイプを早く作ってお客さんに見せ、お客さんを巻き込みながら少しずつレベルアップさせていく。いわゆるアジャイル・スクラム開発を、極端に早めた形です。

発注者にIT知識がなくても、望み通りのものが100%実現される。「良いアイデアが、ちゃんと世に出る」が当たり前にできる、そういう世界を目指しています。

というのも、従来のウォーターフォール型では、最初に全部を定義しきれず、盛り込めない機能が出てしまう。

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査報告書2023」によると、システム開発で満足と回答した発注者は20%以下。8割以上が満足していないという結果でした。

追加開発で最初の倍の費用がかかることもあり、体力のないスタートアップだと、いいアイデアがあっても世に出ていけない。

エンジニア時代にそういう場面をたくさん見てきたので、それを何とか解決したくて立ち上げました。

Q3. 仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。

言われたことをそのままやるのが、実は苦手なんです。

お客さんの要望は聞きますが、それをプロフェッショナルな視点で解釈して、自分が思う理想のものを提案し、実際に形にする。

家づくりに例えるなら、設計図に従って作るだけの“大工”ではなく、“設計者”でありたい。

お客さんには理想の生活を伝えてもらう。でも、それが具体的にどんな家(システム)になるのかを考えるのは、プロの仕事です。

そこはお客さんを絶対に上回らなければ、存在意義がないと思っています。

言われたことだけやるほうがリスクは少ないですが、リスクを取ってでも提案していく。そこを大事にしています。

Q4. 理念やビジョンについて聞かせてください。

日本は、組織や集団になると、なぜかクリエイティビティが失われがちだと感じています。

協調性が強すぎて、突飛なアイデアが言えなかったり、勇気を出して出しても通らず実現されなかったり。

エンジニアの世界はもっとそうで、仕様がガチガチに固まった状態で回ってきて、創意工夫の余地がない。改善すべき点はたくさんあるのに、決まったことだから動かせない。

その窮屈さを、自分自身が経験してきました。それを変えたい。

日本からもっとイノベーションが、デジタルの世界でもたくさん生まれて、「イノベーション大国」と呼ばれる状態に持っていきたい。

クリエイティビティがきちんと評価され、尊重される世界にしたい。

だから「創造の可能性を無限に広める」ということを、ビジョンに掲げています。

Q5. 経営者になられた経緯を教えてください。

もともとエンジニアで、WEB系のソフトウェア開発を9年ほどやっていました。会社勤めが苦手な人間で、一度も就職せずにフリーランスから独立した形です。

最初は本当に大変で、月300時間働いても15万円ほどにしかならない時代もありました。

10時間かけてコーディングしても3時間分しかもらえなかったり、理不尽なこともたくさんあった。

起業のきっかけは、ハッカソンでした。限られた期間でサービスのプロトタイプを作って評価してもらう、企業主催のイベントです。

そこで評価をいただいて、実証費用をいただけることになったので、「どうせなら起業しよう」と。

一社目は畳んでしまい、Yakaze Tech Studioは二社目になります。

Q6. 今後の展望と、いま感じている課題を教えてください。

いまは受注開発がメインですが、自社サービスもやっていきたい。一部はベータ版としてリリースもしています。

たとえば、スタートアップ関連の交流会や勉強会の情報を一覧で見られる「イノベーションレーダー」という無料サービスや、AIがコミュニティマネージャーをしてくれるサービスなどです。

受注のクオリティももっと高めていきたいですし、そのためにOSS(オープンソースソフトウェア)も作っています。

いいプロダクト、イノベーションが世の中にあふれていくことに貢献したい。

課題は、自分への負荷が大きすぎること。ほぼ一人でやっていて社員はおらず、すべてパートナーと組んで回しています。

最近はAIを活用してキャパは増えましたが、それでも慢性的に足りない。

AIをもっと賢くするのか、雇うのか、パートナーを増やすのか。チームづくり、体制づくりが今後の課題です。

今の時代、社員を増やすよりも、優秀なパートナーといかにつながれるかのほうが大事だと思っています。

Q7. これだけは譲れない、という思いは。

いいものを作ろうという情熱ですね。表に出すのは苦手で、内にフツフツとあるタイプなんですけど。

とにかく、ダメなプロダクトを出すのが嫌なんです。分かりづらいUI・UXを見るとストレスを感じてしまう。そういうものを根絶したい。

根はめんどくさがりなので、逆に言えば、「めんどくさい」をなくすためなら寝ないでも作業できる。

不便さをなくすことには、かなり情熱があります。

PROFILE

掲載者・会社情報

会社名
Yakaze Tech Studio株式会社
氏名
高井 昭彦
役職
代表取締役・CTO
所在地
東京都中央区銀座
事業内容
高速なデモプレイ体験サイクルで進むアプリ開発(WEBサービス/iOS/Androidなど)

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