Q1. 現在の事業内容について教えてください。
基本的には、システムの受託開発をしている会社です。Webアプリを中心に、iOS・Androidアプリを開発しています。
主な顧客はベンチャーやスタートアップで、「新しいシステムでサービスを作りたい」という、その最初の一歩を私たちがお作りすることが多いですね。
うちは、事業の立ち上げフェーズ、いわゆる“0→1”に特化していて、既存になかった新しいものを作るときに強い会社です。
業種は問いませんが、経験があるのは医療・教育・建設/不動産あたり。
たとえば、神戸大学発のバイオテックベンチャーであるTearExoさんのアプリ開発をご一緒しました。涙から乳がんリスクを可視化するという、最先端の取り組みです。
今までになかったようなアプリでも、そういうプロジェクトに一番向いた作り方をしています。
Q2. 業界内での強みはどこにありますか。
まず、作り方が特殊なんです。受注してすぐ、2週間ほどでプロトタイプを作ります。
要件定義をしないわけではないのですが、とにかくプロトタイプを早く作ってお客さんに見せ、お客さんを巻き込みながら少しずつレベルアップさせていく。いわゆるアジャイル・スクラム開発を、極端に早めた形です。
発注者にIT知識がなくても、望み通りのものが100%実現される。「良いアイデアが、ちゃんと世に出る」が当たり前にできる、そういう世界を目指しています。
というのも、従来のウォーターフォール型では、最初に全部を定義しきれず、盛り込めない機能が出てしまう。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査報告書2023」によると、システム開発で満足と回答した発注者は20%以下。8割以上が満足していないという結果でした。
追加開発で最初の倍の費用がかかることもあり、体力のないスタートアップだと、いいアイデアがあっても世に出ていけない。
エンジニア時代にそういう場面をたくさん見てきたので、それを何とか解決したくて立ち上げました。
Q3. 仕事をする上で大切にしている価値観は何でしょうか。
言われたことをそのままやるのが、実は苦手なんです。
お客さんの要望は聞きますが、それをプロフェッショナルな視点で解釈して、自分が思う理想のものを提案し、実際に形にする。
家づくりに例えるなら、設計図に従って作るだけの“大工”ではなく、“設計者”でありたい。
お客さんには理想の生活を伝えてもらう。でも、それが具体的にどんな家(システム)になるのかを考えるのは、プロの仕事です。
そこはお客さんを絶対に上回らなければ、存在意義がないと思っています。
言われたことだけやるほうがリスクは少ないですが、リスクを取ってでも提案していく。そこを大事にしています。
Q4. 理念やビジョンについて聞かせてください。
日本は、組織や集団になると、なぜかクリエイティビティが失われがちだと感じています。
協調性が強すぎて、突飛なアイデアが言えなかったり、勇気を出して出しても通らず実現されなかったり。
エンジニアの世界はもっとそうで、仕様がガチガチに固まった状態で回ってきて、創意工夫の余地がない。改善すべき点はたくさんあるのに、決まったことだから動かせない。
その窮屈さを、自分自身が経験してきました。それを変えたい。
日本からもっとイノベーションが、デジタルの世界でもたくさん生まれて、「イノベーション大国」と呼ばれる状態に持っていきたい。
クリエイティビティがきちんと評価され、尊重される世界にしたい。
だから「創造の可能性を無限に広める」ということを、ビジョンに掲げています。
Q5. 経営者になられた経緯を教えてください。
もともとエンジニアで、WEB系のソフトウェア開発を9年ほどやっていました。会社勤めが苦手な人間で、一度も就職せずにフリーランスから独立した形です。
最初は本当に大変で、月300時間働いても15万円ほどにしかならない時代もありました。
10時間かけてコーディングしても3時間分しかもらえなかったり、理不尽なこともたくさんあった。
起業のきっかけは、ハッカソンでした。限られた期間でサービスのプロトタイプを作って評価してもらう、企業主催のイベントです。
そこで評価をいただいて、実証費用をいただけることになったので、「どうせなら起業しよう」と。
一社目は畳んでしまい、Yakaze Tech Studioは二社目になります。
Q6. 今後の展望と、いま感じている課題を教えてください。
いまは受注開発がメインですが、自社サービスもやっていきたい。一部はベータ版としてリリースもしています。
たとえば、スタートアップ関連の交流会や勉強会の情報を一覧で見られる「イノベーションレーダー」という無料サービスや、AIがコミュニティマネージャーをしてくれるサービスなどです。
受注のクオリティももっと高めていきたいですし、そのためにOSS(オープンソースソフトウェア)も作っています。
いいプロダクト、イノベーションが世の中にあふれていくことに貢献したい。
課題は、自分への負荷が大きすぎること。ほぼ一人でやっていて社員はおらず、すべてパートナーと組んで回しています。
最近はAIを活用してキャパは増えましたが、それでも慢性的に足りない。
AIをもっと賢くするのか、雇うのか、パートナーを増やすのか。チームづくり、体制づくりが今後の課題です。
今の時代、社員を増やすよりも、優秀なパートナーといかにつながれるかのほうが大事だと思っています。
Q7. これだけは譲れない、という思いは。
いいものを作ろうという情熱ですね。表に出すのは苦手で、内にフツフツとあるタイプなんですけど。
とにかく、ダメなプロダクトを出すのが嫌なんです。分かりづらいUI・UXを見るとストレスを感じてしまう。そういうものを根絶したい。
根はめんどくさがりなので、逆に言えば、「めんどくさい」をなくすためなら寝ないでも作業できる。
不便さをなくすことには、かなり情熱があります。