「人が足りない。でも、求人を出しても応募が来ない」
いま、多くの中小企業の社長が、同じところで立ち止まっています。しかも、雇えば解決するとは限りません。採用にはお金も時間もかかります。やっと入った人が辞めてしまえば、振り出しに戻ります。
この記事では、人手不足を乗り切る道を「頼む」「減らす」「育てる」「雇う」の4つに分けて整理します。先に答えを言うと、「雇う」はそのうちの1つにすぎません。
人手不足は、中小企業のいちばん身近な経営課題
数字で見ても、状況は厳しくなっています。
帝国データバンクの調査では、2026年7月時点で、正社員が不足している企業は51.3%でした。7月としては4年連続で5割を超えています。人手不足が原因の倒産も、2026年上半期に227件と、上半期として過去最多を更新しました。
2社に1社が「人が足りない」と感じている。人手不足は、もう一部の業種だけの話ではありません。では、社長は何から手をつければいいのでしょうか。
人手不足を乗り切る4つの道
人手不足の対策は、大きく4つに分けられます。
| 道 | やること | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 頼む | 外注やパートナーに仕事を出す | 仕事の量に波がある/専門の仕事が多い |
| 減らす | 仕組みやITで、仕事そのものを減らす | 同じ作業のくり返しが多い |
| 育てる | 今いる人が辞めず、力を出せるようにする | 人はいるが、定着しない・動いてくれない |
| 雇う | 新しく人を採る | 人でなければできない仕事がある |
どれか1つを選ぶものではありません。仕事ごとに、どの道が合うかを決めていきます。順番に見ていきましょう。
道1:頼む ― 社員を増やさず、外の力を借りる
最初に考えたいのは、社外に頼める仕事です。人を雇うより早く始められ、仕事が減れば頼む量も減らせます。
頼み先には、次のようなものがあります。
- 業務委託で手伝ってくれるフリーランス
- ネットで仕事を頼めるクラウドソーシング
- 経理・給与計算・ホームページ更新などの専門の代行会社
- 忙しい時期を助け合える同業の会社
頼むときのコツは、仕事を「切り出せる形」にしておくことです。次の5つを1枚の紙に書けると、社外の人にも渡せます。
- 何をしてほしいか
- どこまでやってほしいか
- いつまでにほしいか
- どんな形で受け取りたいか(Excel、Word、紙など)
- 迷ったときに誰に聞けばいいか
最初から大きな仕事を出す必要はありません。まずは1件、小さく頼んでみる。うまくいけば少しずつ広げます。会社の情報を渡す相手とは、秘密を守る約束も交わしておきましょう。
道2:減らす ― 人がやらなくていい仕事を手放す
次に、仕事そのものを減らせないかを考えます。
ポイントは、「人にしかできない仕事」と「その周りの仕事」を分けることです。お客さんと向き合う仕事や、その場の判断が要る仕事は、人にしかできません。一方で、その周りには、仕組みやITに任せられる仕事がたくさんあります。
| よくある仕事 | 減らし方の例 |
|---|---|
| 紙の書類を探す・回す | クラウドで共有して、どこでも見られるようにする |
| 日程の調整 | 予約や日程調整のツールを使う |
| 毎回ほぼ同じ内容のメール | ひな形をつくっておく |
| 電話での同じ質問への回答 | よくある質問をホームページに載せる |
| 打ち合わせの記録 | 録音して、AIで文字起こしする |
もう1つ見直したいのが、「やめてもいい仕事」です。誰も読んでいない報告書や、慣習で続けている会議はありませんか。やめても困らない仕事をやめるだけで、手は空きます。
人を増やさなくても、一人ひとりがこなせる仕事の量は増やせます。
道3:育てる ― 辞めない、動いてくれる組織にする
せっかく人を採っても、辞めてしまえば振り出しに戻ります。今いる人が辞めずに力を出してくれることは、採用より地味ですが、いちばん確実な人手不足対策です。
育てるために、社長ができることは3つあります。
- 会社の行き先を言葉にする。 会社がどこへ向かうのかが見えていると、社員は自分で考えて動きやすくなります
- 話を聞く時間をつくる。 月に1回、15分でも、一人ひとりと話す時間をとります。不満や迷いに早く気づけます
- 任せる範囲をはっきりさせる。 「自分で決めていいこと」と「相談してほしいこと」を分けて伝えます
「指示を待ってばかりで、動いてくれない」という悩みはよく聞きます。ただ、その裏には「どこまで自分で決めていいのか分からない」という戸惑いが隠れていることもあります。任せる範囲を伝えるだけで、動き方が変わることがあります。
道4:雇う ― 人でなければできない仕事のために
それでも、人を雇わなければ回らない仕事はあります。
雇うと決めたら、まず「どの仕事のために雇うのか」をはっきりさせます。道1〜3で、頼める仕事・減らせる仕事・今いる人に任せられる仕事を分けておくと、本当に人が必要な仕事だけが残ります。
その仕事のために採る人なら、求人の文章も具体的に書けます。
- 仕事の中身:入ってから何をするのか。1日の流れが分かると、応募する人は働く姿を想像できます
- 働き方:勤務時間、休み、給与。あいまいにせず書きます
- 会社と社長の考え方:どんな思いで仕事をしている会社なのか。応募する人は、条件だけでなく「誰と働くのか」も見ています
採る相手を広げるのも一つの手です。週3日や短い時間で働ける人、副業で手伝いたい人、経験はないけれどやる気のある人。「フルタイムの経験者」だけを探していると、応募は集まりにくくなります。
社長が今日からできること:仕事の棚卸し
4つの道を選ぶ前に、やることは1つです。仕事の棚卸しをします。
- 1週間分の仕事を、社長も社員も書き出す
- 1つずつ「頼む」「減らす」「育てる(任せる)」「雇う」のどれに当たるか、印をつける
- 「頼む」と「減らす」から手をつける
書き出すと、たとえばこうなります。
| 仕事 | 今やっている人 | 1週間の時間 | 4つのどれ |
|---|---|---|---|
| 請求書の発行 | 社長 | 2時間 | 頼む |
| 見積書づくり | 社長 | 5時間 | 減らす(ひな形をつくる) |
| 現場の段取り | ベテラン社員 | 8時間 | 育てる(若手に任せる) |
| 現場の作業 | 足りていない | ― | 雇う |
3で「頼む」と「減らす」を先にするのは、すぐに効いて、大きなお金もかかりにくいからです。採用には時間がかかります。そのあいだにも、手の足りなさは続きます。
頭の中で「忙しい」とぐるぐるしている仕事を、まず紙に出す。そこから、打てる手が見えてきます。
まとめ
人手不足の対策は、採用だけではありません。「頼む」「減らす」「育てる」「雇う」の4つを、仕事ごとに組み合わせていきます。
大切なのは、「人が足りない」を「どの仕事の手が足りないのか」に言い換えることです。そこが分かれば、打つ手は自然と決まってきます。
よくある質問
Q. 人手不足の対策で、中小企業が最初にやるべきことは何ですか?
A. 仕事の棚卸しです。1週間分の仕事を書き出し、「頼む」「減らす」「育てる」「雇う」のどれに当たるかを分けます。そうすると、採用しなくても解決できる仕事が見えてきます。
Q. 外注と採用は、どちらがいいですか?
A. 仕事の中身で決めます。量に波がある仕事や、専門性が高い仕事は外注に向いています。毎日ある仕事や、会社のことを深く知っている必要がある仕事は、採用に向いています。
Q. 人手不足による倒産は増えていますか?
A. 帝国データバンクによると、2026年上半期の人手不足倒産は227件で、上半期として過去最多でした。
出典
- 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(LOGISTICS TODAY 2026年8月17日の記事より:https://www.logi-today.com/988394 )
